森アーツセンターギャラリーにて開催中の「大英博物館 古代エジプト展」に行って来ました
展示がとても分かりやすく鑑賞できるように構成されて、楽しかったです。

例えば、このミイラの展示、ケース内も上からも下からも多方面から観られるような工夫がなされていました。キャプションも展示台の上部と下部にあって混んでいましたが、見やすかったです。でも今はみんな、イヤホンガイドの時代かもしれません。照明も効果的に使われていました。
この展覧会は、「死者の書」を中心にした展示となっているので、観易くなっていて、関心を深めることができました。
「死者の書」 とは 古代エジプトにおいて、死者とともに埋葬されたパピルスの巻き物のことで、そこには死者の霊魂が肉体を離れてから死後の楽園アアルに入るまでに待ち受ける様々な試練から、死者を守るための呪文が美しい文字や挿絵で彩られて、書かれていものです。

大英博物館が所蔵する最も美しい彩色パピルスのひとつですが、ここには、死者が来世でも自由に食事や呼吸がで きるようにする「口開けの儀式」の場面が描かれています。
「フウネフェルの『死者の書』:口開けの儀式」
直立する仮面をかぶったミイラと、それを背後で支えるジャッカルの頭をしたアヌビス(の格好をした神官)がいて、その周りには家族や神官たちが祈りを捧げています。
神官の1人は手斧(ちょうな)という大工道具をミイラの口の前に出していて、これで口を開けて呪文が唱えられるようにします。
今回の展覧会の目玉は、世界最長「死者の書」と言われる、グリーンフィールド・パピルスが公開です。その長さは、実に37mもあります。大英博物館でもそうやたらと公開できないものだそうです。
その展示会場に入る前に、いろいろと勉強できる案内がされていて、それからおもむろに、グリーンフィールド・パピルスの会場に入ります。

「グリーンフィールド・パピルス」の「天と地のはじまり」を描いた部分です。エジプト神話です。ショウ神とテフヌウス女神から、大地の神ゲブと天の神ヌウトが生まれますが、この2神は、抱き合ったまま離れようしません。怒ったシュウ神は、ヌウト女神を頭上に持ち上げて2神を離します。その絵が描かれています。
この結果、天は上に、地は下に、その間には大気と湿気が存在するようになった、ということです。

「グリーンフィールド・パピルス」の「審判」の部分です。
冥界の王オシリス神の前で、死者の心臓が天秤にかけられています。反対側には、真理の女神マアトの小像。釣り合わなければ有罪となり、怪物アメミトに食べられてしまうのです。ここではオシリス神の前で42項目の罪を否定して潔白を証明する必要があります。
ここでは、「死者の書」にある呪文の効力で天秤は釣り合うことになります。
この天秤が釣り合うとイアルの野という楽園で再生がかなうのです。
つまり、「わたしは不公平をしたことはない。」「わたしは、盗みをしたことはない。」「わたしは、他人を殺害したことはない。」「わたしは他人を欺いたことはない。」「わたしは、嘘を言ったことはない。」等々と「否定告白」をして行くことによりオシリス神の法廷の審判を切り抜けられると説いています。
「死者の書」はそれだけ大切なものだったのです。
審判を乗り越えた者が永遠の命を得て、来世の楽園「イアルの野」へ入れるわけですが、そこでは生前と同じような生活を送ります。そこでは、畑を耕すとか、牛を追うなどの労働をしています。いわゆるわれわれは想像する 「天国」のイメージとは違います。
現世と同じように働くわけです。

でも、みんなが働くわけではないようです。多分王族などは、変わりに働いてくれる人が必要だと思ったのでしょうか、農作業などの労働は、副葬品の小像シャブティが身代わりとなってくれました。
「シャブティ」という、木や陶器で作られた人形(ウシャブティとも言います)が副葬品として作られていました。
最後に、最もエジプトらしいと言える「ミイラマスク」です。
見開いた大きな目で、青と金のシマシマ模様の髪をした、いかにもエジプトといった感じの金のマスクです。後頭部には人の顔の鳥などが描かれています。また、頭の上にも文様があり、これは死者を守る呪文のようでした。マスクが金なのは錆びることがなく神々の象徴とされていたためのようです。これは何枚も重ねた布を石膏で固めて作るのだそうです。

夏休み最後で、お子さん連れが多く、大変混んでいましたが、とても、感銘を受けた展覧会でした。